「師古妙創―師村妙石六六篆刻書法展」現地レポート



 大連現代博物館、煙台美術博物館で「師古妙創―師村妙石六六篆刻書法展」が開催された。師村氏は今まで中国各地で個展を開いてきたが、今回が最大規模で、会期中に66歳(大寿)を迎えての企画でもあった。ザ・テンコクの代表作と新作計80点に加え、書の作品38点も展示された。新作の「中国の夢十二祈望」は中国国旗を想像させる色合いでの十二連作で、多くの中国人の心をつかんだ様子であった。良渚シリーズの「雲」は色鮮やかに雲の動きを表現し、愛心シリーズでは甲骨文字の心を多用し、独自の世界を創出した。

 本展のメインテーマは「愛不再戦」である。戦後70年に際し、師村氏は「皆が愛を持って平和のために不再戦を唱えたなら、戦争は二度と起こらない。不再戦とは、過去の戦争に関して、正しい歴史認識をした上での不戦非戦反戦という平和への誓いである」と訴えた。会場で説明を聞いた人々は、共感した様子で心地良い空気感を味わっているようだった。この空間はとても神聖で、特別な何かを感じさせる空気に包まれていた。

 会期中、師村氏は作品を前にして、何度となく説明会を開いた。子供達が目をキラキラさせている姿がとても印象的であった。「中国の文化は素晴らしい。日本人は中国文化から多くのことを学び、独自の文化を作った。将来、皆さんも日本人と仲良くしてほしい」と師村氏は語りかけた。作品を通してメッセージを伝える。その過程の中で、いろいろなものがつながっていくのだ。芸術で人と人の心がつながり、国と国がつながるという、芸術の大きな可能性を感じることができ
た。

 ザ・テンコクという現代美術が、更に可能性を拡げていることも強く感じとれた。新作には確かに旧作とは違った味わいがあった。この先、ザ・テンコクが更なる進化を遂げ、人や国同士をつなぐかけ橋になる可能性も十分にある。今回の展覧会を通じて、既に15名の中国人が師村氏に弟子入りすることになり、そのかけ橋を往来し始めた。

 国家を代表する中国美術館、中国文字博物館、更に河南省美術館から今後の個展のオファーがあり、大きな期待や希望が膨らんできている。今展の会期は延べ19日間で総入場者数は33,000人と盛況であった。


2015年7月31日

文責 冠臣